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taitol

2014-12-16  更新

 

自然界の放射線

放射線に関して、原燃や国の説明では自然界にも放射線は十分に存在するから、原発から出る放射線は大したことないという説明がありますが、下記の上原貞治氏の説明によると、宇宙線は人体にほとんど影響ない種類ということです。原発から出る放射線とは種が違います。

宇宙線の影響で臓器や血液そのものが傷つけられて、病気になるような心配はない。

知られざる宇宙線の話 (第2次編)

上原 貞治

1.1次宇宙線の運命
さて、今回はいよいよ、地表にいる我々のところに降ってくる宇宙線、すなわち、2次宇宙線の話をする。2次宇宙線は前回に紹介した1次宇宙線のおかげで生じるのであるが、おおざっぱに言えば、1次宇宙線と2次宇宙線はほとんど別物といってよい。 1次宇宙線は、地球大気によってほとんど完全に「消滅する」のである。
すでに述べたように、地球大気の厚さは、密度で言うと厚さ1.3mの鉄に匹敵する。1次宇宙線のほとんどすべてはこれを貫通できず、地表に達することはない。1次宇宙線の主成分は陽子である。陽子はプラスの電気を帯びており原子核を構成する粒子である。この点が非常に重要である。
陽子が地球の大気圏に猛スピードでつっこんでくるとそれは最終的に止まるのであるが、止まり方には2通りある。1つは、ただ単にだんだん減速して止まってしまう、という止まり方である。これは、地球の大気を構成する気体分子中の電子によるもので、まあおおざっぱに言えば、大気の摩擦で減速するといったイメージである。スピードの落ちた陽子はもはや宇宙線とは呼ばない......「宇宙線の陽子も、速度が落ちればただの水素イオン」というわけである。宇宙をはるばる旅して来た陽子であっても、ほとんど止まってしまえばもともと地球にある水素イオンと区別できないので、こちらはほとんど「人畜無害」である。
実を言うと、もう1つの止まり方が2次宇宙線の生成に関係している。それは、1次宇宙線の陽子が十分減速しない間に、大気を構成する分子中にある原子の原子核に派手に衝突する場合である。こうなるとしばしばおおごとが起こる。原子核は原子に比べてずっと小さいのでぶつかる確率はごく小さいように思われるが、大気中には膨大な数の原子核があるので、大気中を何kmも進んでいくうちには原子核に当たるのが確率的には当然なのである。もとの陽子の速度が遅い場合は、ぶつかっておおごとを起こすまでに減速してしまうのであるが、ある程度以上の速度を持つ陽子は原子核を破砕するのに十分なエネルギーを保持しながら、実際に衝突を起こす。

2.原子核の破砕とπ中間子の生成
高速の陽子が原子核にまともに当たると原子核は破砕され、陽子や中性子や原子核の破片が吹っ飛ぶ。それと同時にπ中間子(パイ中間子)という別の種類の粒子が飛び出すことが多い。π中間子は、原子核の中で陽子と中性子とを結びつけている粒子で、湯川秀樹博士がその存在を予言したものである。これが実際に宇宙線の衝突の測定中に発見されたことにより湯川博士は1948年のノーベル物理学賞を受賞したのである。π中間子は、普段は原子核の中だけに沸騰するお湯の中の泡のように一瞬だけ生まれ消えているのであるが、外からエネルギーを与えられると本当の物質粒子となって原子核の外に飛び出して来る。このπ中間子が2次宇宙線の元である。しかしながら、π中間子は寿命が短くおよそ5000万分の1秒で消滅してしまうので、地上に達することは滅多にない。

3.2次宇宙線の主成分--μ粒子
π中間子は寿命が短いのですぐに消滅し、その結果としてμ粒子(ミュー粒子)とニュートリノが生成される。これが、「π中間子の崩壊」であるが、π中間子がμ粒子とニュートリノに分裂するというよりも、π中間子が消滅してそれと同時にμ粒子とニュートリノが出来る、というイメージがより正しい。μ粒子はπ中間子と同様に電気を帯びた物質粒子である。これが元のπ中間子の運動エネルギーを引き継ぎ地上まで達する。(ニュートリノも地上に達するがこれについては次回)。このμ粒子が2次宇宙線の主成分である。そして、このなじみの薄い「μ粒子」という粒子が我々の体に日々当たっているのである。
μ粒子も寿命の短い粒子である。その寿命はπ中間子よりも長いものの、わずか50万分の1秒にすぎない。それでも地上に達するのに十分な時間なのである。これは次のようなからくりによる。μ粒子は光速よりほんの少しだけ遅いスピードで地上に向かう。単純計算では、光速で飛ぶ物体でも50万分の1秒間には600mしか飛べないことになる。μ粒子ができるのはおもに数十km上空である。これでは地上に達することは期待できないように思える。
しかし、ここに「相対性理論」という理論がある。光速に近い速さで飛ぶ粒子は時間が延びるのである。そしてμ粒子においてすすむ時間は遅くなる......我々の50万分の1秒は、高速で飛ぶμ粒子に対してはその10分の1、あるいは100分の1の時間にしかならないのである。こうして、かなりの量のμ粒子は単純計算の10倍、あるいは100倍の距離を飛んで、地上に達することが出来る。

4.μ粒子の運命
μ粒子は極めて「貫通能力」の大きい粒子で、それはX線や陽子線の比ではない。μ粒子は原子核と派手な衝突を起こすことがないのである。それで、高い運動エネルギーを持つμ粒子は人体さえもらくらく貫通する。運動エネルギーにもよるがμ粒子が鉄を数m貫通することは決して難しいことではない。地上に達したμ粒子の多くは、地面に突き刺さり、地下数十mあるいは数百mまで潜り込んだところでエネルギーを失って停止する。そして、そこで寿命の終わりを迎えて、電子とニュートリノと反ニュートリノに崩壊する。
「貫通能力の大きい粒子が人体を通り抜ける」と聞くと、非常に物騒なように思われるかもしれないのが、それはむしろ逆である。人体を通り抜けるということは人体には影響を与えないのだから、むしろ安全なのである。透明人間にぶつかるようなものである。痛くもかゆくもない。もちろんμ粒子の数は膨大な量である。1平方メートルあたり1分間に約1万個降ってくる。それが人体の遺伝子などの分子を壊したりする確率はゼロではないので、人体に悪影響を全く与えないわけではない。長い目で見れば生物の進化に寄与しているのかもしれない。しかし
臓器や血液そのものが傷つけられて、それによって病気になるような心配は全くない。

( 余談:X線や陽子線などは貫通能力が小さく、人体に当たると体内で止まってしまう場合が多い。止まる際にエネルギーを放出するので人体に与える影響は大きい。放射線障害を引き起こすこともあれば、がんなどの治療に用いることもできる。ガンマ線、電子線や中性子線の貫通能力は中程度である。従って、人体に与える影響も中程度といえるが、これらは、放射線の遮蔽体の設計や実装をするのがやっかいで、放射線防護上の注意を要する。)

5.電磁シャワーとガンマ線
2次宇宙線のなかでμ粒子の次に多いのは電子である。その他の粒子はずっと少ない。電子は1次宇宙線にもある程度の量が含まれているが、これがそのまま地上まで降ってくるわけではない。まず、1次宇宙線の電子がどうなるかを考えてみよう。電子は、大気中に突入すると、原子核の近くを通過する際に高エネルギーのガンマ線(光子)を放出しさらに飛び続ける(これは制動輻射と呼ばれる現象である)。一方、ガンマ線はエネルギーが高い場合は、別の原子核の近くを通過したときに電子と陽電子のペアに変化する(電子・陽電子対生成)。陽電子は電子の反粒子で、いわばプラスの電気を持った電子である。陽電子も電子と同様に制動輻射を起こす。このように、制動輻射と電子対生成の繰り返しで、はじめは1個の電子であったものがねずみ算式にたくさんのガンマ線とたくさんの電子と陽電子になっていくのである。この現象を電磁シャワーという。このうちの1つの電子または陽電子が地上に達することがあり得る。
しかしながら、電磁シャワーはどこまでも発達するわけではない。電磁シャワーのエネルギーの総量は、もともとの1個の電子の運動エネルギーに起因するのである。シャワーが発達するにつれて粒子1個あたりのエネルギーは落ちていく。そして、そのエネルギーがあらたな粒子の発生を引き起こせないくらいに下がったときに電磁シャワーは終息するのである。最後には、低いエネルギーの電子は物質中で止まる。陽電子は物質中の電子といっしょになって消滅して2個のガンマ線になる。低いエネルギーのガンマ線は、電子に何度もはねとばされたりしながら、最終的には、原子の中の電子にエネルギーを与えて消滅する(光電効果)。

1次宇宙線がガンマ線であったときも、結果はほぼ同じになることが容易に理解いただけるであろう。逆にいうと電磁シャワーの発達した部分を見ただけでは元の1個が電子だったのかガンマ線だったのか区別が出来ない。さらにガンマ線は、1次宇宙線や電磁シャワーのほかに、原子核の破砕過程においても、中性π中間子の崩壊に伴って発生する。(π中間子には電気を帯びたものと電気的に中性のものがあり、崩壊してμ粒子を生み出すのは荷電π中間子である)このガンマ線もガンマ線にはかわりがないので、電磁シャワーを起こす。

このように、我々の身体に降り注ぐ2次宇宙線は、ミクロの世界の「壮大な」物質の生成・消滅の結果といえるのである。

 

木こりの家プロジェクト SHOKAN design  (C)大塚尚幹